天文学の言い回し |
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「光で見る」?「電波で見る」?こんな表現をどこかで見たこと、聞いたことはありますか?「太陽を光で観測する」 「天の川を赤外線で撮影する」 「電波で明るい天体」 「X線で見た銀河」 「ニュートリノを使って超新星を調べる」 上の文の意味がわかる、あるいは、こうした表現に違和感を覚えない方は、おそらく、天文学になんらかの関わりや親しみを持っているでしょう。 これらは天文学に独特の言い回しです。 一般の方にとっては、 「太陽を光で観測するのではなく、『太陽の光を観測する』じゃないの?」 「赤外線で撮影する、って、どういう意味?」 「電波で明るいんじゃなくて、『電波が強い』の間違いでしょ?」 「銀河をX線で見るというのは、レントゲン写真みたいに銀河にX線を当てて調べること?」 「ニュートリノって、使えるの?」 と???がいっぱいかもしれません。 実は、天文観測においては大前提があります。 人間の方から天体に向かって光を当てることはありえず、人間は天体からやってくる光(電磁波)や粒子を待つしかない、ということです。 天体はとても遠いので、月や惑星のようにごく近いもの以外は、人間が積極的・能動的な調査手段を使うことはできません。 ひたすら受身で、天体からやってくるものをとらえるしかないのです。 だから、「ある特定の波長域(エネルギー)の電磁波(可視光、電波、X線など)や粒子をとらえられる装置(望遠鏡、受信機など)を使って、天体を観測する」ことを、 略して、「光で見る」「電波で見る」「X線で見る」などと表現します。 したがって、最初に挙げた文は言い換えると、 「太陽を光学望遠鏡で観測する」 (※黒点が見える) 「赤外線波長域に感度を持つカメラで天の川を撮影する」 (※関連記事:「AKARIの全天画像」) 「電波望遠鏡で観測したときに明るく見える天体」 (※関連記事:「宇宙からの電波」) 「X線観測衛星を使って観測した銀河」 (※関連記事:「M82」) 「超新星爆発によって生じたニュートリノを調べる」 (※関連記事:「SN1987A」) となります。 投影中のプラネタリウム「ブラックホール」でも、 「はくちょう座X−1はX線で明るい」「3C273は電波で発見された」のような表現をしているかもしれません。 けっして言い間違えているわけではなく、天文学的な慣用表現なのです。 2010.7.2記(石坂) |