重量級ブラックホール、記録更新 |
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超ヘビー級ブラックホールの発見人間の世界では「1位」の栄冠を得るために涙ぐましい努力と犠牲が払われることがあります。 他人から見れば、「なんでそこまで?」と思ってしまうようなことも・・・。星の世界でも、いろいろなジャンルで1位、2位が決められ、その順位が入れ替わることもしばしばですが、多くは人間の側の都合によるものです。 しかし、その順位の入れ替わりが天文学のナゾと密接にかかわっていることもあります。 最近1ヶ月の間に、ブラックホールの重さの1位記録が塗り替えられました。 ブラックホールには、銀河の中心にある巨大なもの(太陽質量の数100万〜数億倍)と、恒星の最期の姿としての恒星ブラックホールがあります。 今回発見されたのは、恒星ブラックホールの最重量級です。 10月の中旬にチャンドラX線観測衛星が太陽の16倍という質量をもつブラックホールを発見していましたが、 11月初め、同じチャンドラX線観測衛星が、太陽の24倍(〜33倍)というヘビー級のブラックホールを発見しました。 理論的には、恒星ブラックホールの最大質量は太陽の15−20倍とされていますので、今回のヘビー級ブラックホールは明らかに重量オーバーです。 観測が間違っているのでしょうか?それとも理論が間違っているのでしょうか? 今回の一件では、どうも、理論の方で修正が必要なようです。 ヘビー級の恒星ブラックホールを作るためには、100太陽質量ほどの超弩級の恒星が必要です。 ところが、こうした超弩級の恒星がその最期に超新星爆発を起こすと、その激しい爆風により、星のほとんどの部分が吹き飛んでしまって、ブラックホールに取り込まれる物質が無くなってしまいます。 それで恒星ブラックホールの最大質量が理論的に推定されていたのですが、今回発見されたブラックホールのもとの星の場合、どうも超新星爆発の爆風が弱かった (恒星を構成するガスの成分が水素とヘリウムのみで、爆風を強くする"金属"がほとんど含まれていなかった)らしいのです。 ただ、まだ解決されていない点もあります。 このブラックホールはすぐ近くに伴星があることが分かりましたが、超新星爆発を起こす前の星は非常に大きく膨らんでいるはずですので、現在の伴星との距離がブラックホールになる前と同じなら「恒星の中に恒星があった」というおかしなことになっていしまいます。 ブラックホールの重量級をめぐる1位争いには、星の一生をかけた課題が隠されています。 ※原文は英語ですが アメリカ航空宇宙局NASAのプレスリリースをご覧ください。 2007.11.12記(石坂) |