火星の氷河とクレーター |
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時を刻むクレーター火星の中緯度地方(南緯38°)ヘラス盆地の東端にある砂時計 型のクレーターです。高さ数kmの山から氷河によって運ばれた土砂がクレーターを埋めています。 小さい方は直径9km、大きい方は17kmあり、まず小さいクレーターを埋めた土砂が、 500m下がったところにある大きなクレーターに流れ込んでいるのが分かります。 問題はいつこの地形が形成されたのか?です。 中緯度地方に氷河ができ、それが地球の氷河と同じように移動するためには、 ある程度の寒さと、寒すぎない適度な温かさ、そして氷を昇華させないためにある程度濃い大気(気圧)が必要です。 現在の火星は非常に空気が薄く、また寒冷なので、中緯度地方では地下数mのところに永久凍土の形で氷が残されているだけです。 ところが、クレーターの年代から推測される氷河の形成時期は数百万年前のことなのです。 惑星の年代からすると、つい最近の出来事です。 ・数百万年前の火星には濃い大気があったのでしょうか? ・大きな気候変動が数百万年前にあったのでしょうか? ・あったとすれば、それはなぜなのでしょうか? 詳しいことは今後の研究を待たなければなりませんが、 この小さな砂時計型のクレーターはまさに、火星の歴史を刻んでいるのです。 ※この写真はヨーロッパ宇宙機構(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスが撮影したものです。 原文は英語ですがESAのプレスリリース をご覧ください。 ※火星は2005年3月現在、明け方の南東の低空(やぎ座領域)に見えています。 2005.3.21記(石坂) |